ワークライフバランス研究所の業務内容をご紹介いたします。
ワークライフバランス労務相談顧問 労働時間短縮コンサルティング 出産制度、育児休業ハンドブック厚生労働省が今年1月、マタニティーハラスメント(マタハラ)に関する通達を改定しました。
(参考:厚生労働省が発表した通達内容)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000071927.pdf
(参考:改正の概要)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/kaiseinogaiyou.pdf
近年、妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いなどの相談件数が引き続き高い水準で推移していること、次項に書くマタハラ訴訟を踏まえ、働く女性が妊娠・出産を理由に不当な扱いを受けるマタハラを防ぐため、厚生労働省は企業への指導を厳しくするよう全国の労働局に指示しました。従業員の妊娠や出産と、企業が解雇や降格などを行った時期が近ければ原則マタハラに当たると判断し、男女雇用機会均等法違反、育児・介護休業法違反や事業場の雇用管理に問題があると考える場合は、事業主に報告を求めるなどして被害の拡大を食い止めるねらいです。
広島市の病院に勤務していた理学療法士の女性が、妊娠後に降格されたのは不当だとして病院側に170万円の賠償などを求めた訴訟です。
女性は、病院のリハビリ部門で2004年から副主任を務めていましたが第2子を妊娠した2008年、産休と育休を取得する前に労基法が定める軽易業務への転換を求めたところ、異動先には主任がいるという理由で副主任を外されて管理職でなくなり、育児休業復帰後も、副主任職に戻れないことを不服として告訴しました。
1審広島地裁は、降格は女性の同意を得た上での人事上の措置で不利益な扱いとは認められないとして請求を棄却し、2審広島高裁も、管理職の任免は使用者側の経営判断に委ねられると1審を支持しましたが、最高裁では妊娠による降格は均等法違反であるとの判決を下しました。
① 副主任職解任によって業務の軽減等有利な影響が大きかったとは言えない一方、処遇上の不利益、管理職手当の減額等、不利な影響は明白であり、職場復帰後も副主任に戻れないことから一時的な措置でないことが明白。
② かつ、軽易業務転換後の業務内容や影響、職場復帰後に副主任にもどるか否かの説明がなく、不十分な説明であったことから自由な意思に基づいて承諾したとは言えない。
③ 副主任職のまま主任を補佐する形で業務を行っていたことについて業務上の必要性の有無及びその内容や程度が明らかでない。
→以上より均等法9条3項の不利益取り扱いに該当し無効となりました。
3. 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
解釈通達により、妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであるとされていますが、「契機としているか否か」の判断は妊娠・出産・育休等の事由と時間的に近接しているか(原則1年以内)で判断されます。さらに事由の終了から1年を超えている場合でも、実施時期が事前に決まっている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動(不利益な配置変更等)、人事考課(不利益な評価や降格等)、雇止めについては、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断するとされています。
妊娠・出産等の事由があった日から1年以内の不利益変更(降格・解雇・雇止め)に関しては合理的な理由がない限り避けた方が良いです。
その他、育児・介護休業法に関するQ&Aはこちらをご覧ください。
解釈通達には例外があり、下記の場合は例外として「不利益取り扱い」を認めるとされています。
(参考:厚生労働省リーフレット)
▶ 例外①(業務上の必要性が不利益取扱の影響を上回る特段の事情がある)
・経営状況の悪化が理由である場合:不利益取扱いをしなければ業務運営に支障が生じる状況にあった上で、不利益取扱いを回避する合理的な努力がなされ、人員選定が妥当である 等
・本人の能力不足等が理由である場合:妊娠等の事由の発生前から能力不足等が問題とされており、不利益取扱いの内容・程度が能力不足等の状況と比較して妥当で、改善の機会を相当程度与えたが改善の見込みがない 等
▶ 例外②(本人が同意し、一般的労働者が同意する合理的理由が客観的に存在)
・契機となった事由や取扱いによる有利な影響(労働者の求めに応じて業務量が軽減されるなど)があって、それが不利な影響を上回り、不利益取扱いによる影響について事業主から適切な説明があり、労働者が十分理解した上で応じるかどうかを決められた 等
※実際にはより詳細な状況等を確認した上で違法性の判断を行います。
紛争を未然に防ぐため、下記の点に気を付けることが重要です。
■ 原則として、妊娠・出産・育児休業等の事由から1年以内(時期が事前に決まっている措置に関する不利益取扱いの場合は、事由の終了後の最初のタイミング)になされた不利益取扱いについては、例外に該当しない限り、違法と判断されます。
■ 妊娠・出産等をした労働者に対して雇用管理上の措置を行う場合、それが法違反となる不利益取扱いでないか、改めて確認して下さい。