妊娠・出産を理由に解雇、降格などを迫られるマタニティーハラスメントについて、 その指導を強化し、是正指導や勧告に従わない企業の企業名を公表することを厚生労働省が公表しました。
最高裁が昨年10月に示した「妊娠による降格は男女雇用機会均等法が原則禁止しており、本人の同意がなければ違法」との初判断を受け、
今年1月には妊娠・出産と、解雇・降格などの不利益取り扱いを受けた時期が1年以内であれば、原則当該行為を"マタハラ"とみなし違法行為とする、という通達が出たのは記憶に新しいかと思います。
今回、さらに厳格に是正指導するよう労働局に指示し、是正指導や勧告に従わない悪質企業の企業名の公表に踏み切ったことで、より企業に危機感を持たせ、意識改革ができることが期待されています。
マタハラについて、今までは女性が企業からの不利益取り扱いを訴えても、「(不利益取り扱いは)能力不足だ」などと反論されてしまえば、それ以上労働局も踏み込むことはできませんでした。
厚労省によると平成25年度の労働者からの男女雇用機会均等法に関する相談は、相談件数の増加順に見ると、「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」が2,090件で前年度に比べ115%、「母性健康管理」が1,281件で前年度に比べ119%となっています。
同年度、雇用均等室は積極的な事業所訪問による雇用管理の実態把握を実施し、「母性健康管理」の是正指導件数は、 前年度に比べ2倍強に増加しています。
このような相談件数の増加に加え、昨年10月の最高裁判決が追い風となって、厚生労働省は今年1月には通達を発表しましたが、今回さらなる取り締まり強化をねらいます。
※最高裁判決及び1月の通達内容に関してはこちらをご参照ください。
妊娠、出産を理由とする不利益変更はもちろん違法ですが、他にもこんな理由で不利益変更すれば違法となります。
・妊婦健診などの母性健康管理措置
・産前産後休業
・簡易な業務への転換
・つわり、切迫流産による労働能率低下、あるいは仕事ができない状態
・育児時間
・時間外労働、休日労働、深夜労働の制限
下記の様な変更も"不利益変更"とみなされます。気を付けましょう。
・雇止め
・契約更新回数の引き下げ
・退職の強要
・雇用形態の変更(正社員→契約社員など)の強要
・降格
・減給
・賞与などにおける不利益な算定
・(不利益な)配置変更
・(不利益な)自宅待機命令
・(不利益な)人事考課
・仕事をさせない、雑務のみさせるなど
原則、妊娠・出産・育休などを"契機として"(=事由発生日から1年以内に)不利益変更を行った場合は、当該不利益変更は妊娠・出産・育休が理由だと解され、違法となります。
「社員の能力が低かった」などの理由も通用しません。
~企業名公表までの流れ~
雇用均等室にマタハラの相談があった場合、先ず聞かれるのが妊娠・出産・育休を契機としていたかどうか(つまり、当該事由があった日から1年以内の不利益変更かどうか)です。
その際、"契機である"と判断された場合は、「例外」に該当するかどうか(法違反には当たらないとされる事情が存在するかどうか)等の事実関係の報告徴収を行います。※「例外」に関して詳しくはこちらをご参照下さい
この上で、通達に基づき、「例外」に該当しないと判断した場合、右記のように厳正に助言・指導・勧告を行い、是正を求めることとなりますが、厚生労働大臣名での勧告書を交付しても、なお是正されない場合には、企業名を公表されます。
不利益変更をしないように注意することに加え、是正勧告・是正指導にはきちんと従うことを心がけてください。
是正勧告・指導には、誠実に対応し、今後の社内の取り組み・制度を再度見直し構築してください。
具体的な仕組み作り、対処方法など、お気軽にご相談ください。